文体など心掛けたこと
物語を書く際にテーマの次に決めなければならないのは、登場人物でもストーリーでもなく、文体だと思っています。『エンタングルメント・マインド』シリーズは、中高生にも読んでいただきたいと考えていましたので、できるだけ簡潔な文体を心がけました。一文をできるだけ短くリズムよく、比喩もわかりやすいものに、難しい言葉はできるだけ使わないように、など。また、エピソード1,2,3は、さわやかな読後感が得られるように軽快な文に、エピソード4,5,6は、暗い雰囲気を出すために固い表現を多くしております。
また全エピソードは三人称客観視点で書きました。この手法では、会話文以外の地の文に登場人物の心情を書くことができません。見えたままの世界しか書けないのです。もちろん作者の想像や主張、感想なども書けません。難しい手法ではありますが、わたしはこの手法がすきです。というのも、自分が読者のときのことを考えると、わたしは作者が代弁する登場人物の心情を読みたいのではなく物語を読みたいんだというのが良くあるからなんです。現実世界では他人の心情はわかりません。行動や言動から想像するしかありません。それを小説の世界に持ってきたのが三人称客観視点です。この手法で書かれた本の向こう側には、誰の干渉も受けていないもう一つの世界が広がっているのです。
カメラアイとも言うべきこの手法のメリットは、読んでいる人がまるで映画を見ているように物語に没頭し、登場人物がまるでそこに生きているように感じられることにあります。ただ、読者にそこまで没入してもらうためには、登場人物が今何を考えているのか?どう感じているのか?を簡潔な会話や情景描写で表現しなければなりません。とても難しいです。まだまだつたない文章の『エンタングルメント・マインド』シリーズですが、読んでいただいたみなさんが少しでも没入感を感じていただければなによりです。
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