2025.06.15 03:11読書感想文 『悦楽の休日: 僕と、俺と、あたしと、わたしのこと』 柏木 海(著) 出雲渚(男)は、高校の同級生だったという男に、あるパーティに参加しないかと誘われる。参加費は120万円。ただ初回は無料で参加できるという。渚は思い切ってそのパーティに参加した。そこで彼の出会った人々とは? たいへんおもしろい設定のSF小説でした。量子論における多世界解釈、いわゆるパラレルワールドを使った設定ですね。わたし、寡聞にして知らなかったのですが、あ...
2025.06.11 11:37読書感想文 『奇習の村』 深月 暁(著) 地方の風習などを取材しているフリージャーナリストの矢崎のもとに、差出人不明の手紙が届いた。手紙には、ある村には秘密の風習がある、と書かれていた。矢崎は手紙の内容に興味を持ち、山奥の村に向かった。 世間から隔絶した村の風習、といえばホラーの定番シチュエーションですね。余所者を寄せ付けない、受け入れないという『村』のイメージが、近寄りがたい場所、近寄ってはいけ...
2025.06.07 06:53読書感想文 『ぼくらの街の捜査本部: この街に事件は舞い降りた』 赤石紘二(著) 大雨によって道路が寸断された過疎の村で、殺人事件が起こった。頼れる警察官もいない。定年後にこの村に移り住んできた元刑事の安藤は、村人ともに事件の真相を追う。 大雨で道路も通信網も遮断されてしまった村を舞台にした、クローズドサークルものミステリ短編です。元刑事と元警視庁副長官の引退ジジイふたりが、昔取った杵柄で事件を捜査して解決に導いていきます。怪しい人物が...
2025.06.04 12:03読書感想文 『ロンドンのサムライ』 天堂晋助(著) 19世紀末、ロンドンでひとりの日本人が賭け拳闘試合に出場した。相手は、痩せた日本人の二倍以上も体格差のあるモンスターのような男。痩せた日本人の勝ち目はないように見えた。しかし観客のジャックは、有り金全部をその日本人に賭けてしまったのだ。なぜかは自分でもわからなかった。 日本では幕末の頃のロンドンを舞台にしたアクション小説です。薩摩藩士で剣の達人でもある矢作...
2025.06.03 11:27読書感想文 『IQ刑事 part1』 海野李白(著) 敏腕刑事の橘と若手刑事の松岡は、ある男と焼き肉屋で会っていた。その男の名前は三好大輔。彼は橘の幼馴染で、橘が事件に行き詰まると彼の意見を聞きに来るのだった。彼は、事件の概要を聞いて容疑者の顔写真を見るだけで、その容疑者が犯人かどうか判別ができるという特技を持っていた。 密室殺人や、詐欺事件などを解決していくミステリ短編集。三好大輔は事件現場に行くわけではな...
2025.05.31 01:30読書感想文 『ノースアイデンティティ』 ヒロ・AK・イシイ(著) 世界は未曽有のウイルスパンデミックで崩壊。人々は小さなコミュニティに分かれ、争いながらもなんとか生きていた。そんななか、アメリカ南部に住んでいたリュウジは、母の遺言に従い、アラスカの向こうにあるという『タカトワ』というところを目指し、電動バイクに乗って、ひとり旅に出る。 本作は、殺人ウイルスのパンデミックで人口が激減し、人々がエネルギーと食糧を巡って殺し合...
2025.05.23 03:13読書感想文 『強振ブルース』 新田 将貴(著) プロ注目の高校野球選手だった成元は、試合中の大けがで甲子園に行けず、野球を引退した。野球一筋だった彼は野球しか取り柄がなく、仕事も続かず、夜通しバッティングセンターで打ち込む日々。鬱屈した彼に店主が持ち掛けてきたのが、賭けバッティング『イチマンエン』だった。夜のバッティングセンターで、真剣勝負が始まる。 昔ならジャイアンツ王・長嶋、今なら大リーグで大活躍し...
2025.05.18 02:38読書感想文 『シンクロニシティの螺旋』 こっちのたつや(著) 東京記憶研究所で働く三枝瑠璃は、彼女にしかない特殊能力を持っていた。彼女は、他人の記憶に潜航し、その記憶を修復することができたのだ。そんな彼女のもとに、世界的な科学者ラインハートから緊急の依頼が舞い込む。彼の記憶が盗まれた、という。 記憶と意識が織りなす精神世界を舞台にした、サイエンスファンタジーのほうのSF小説でした。現実世界では表しきれない空想や概念を...
2025.04.25 06:55読書感想文 『プロフェッサ―葛和の事件簿』 赤石紘二(著) ある日、心理学教授の葛和は、見覚えのないふたりの女子学生に相談を持ちかけられる。友人ユナが書置きを残して失踪したというのだ。自殺を仄めかす書置きの内容に興味をそそられた葛和は、もうひとつの手がかりトモカズという人物を探し始める。 派手さはありませんが、しっかりどんでん返しのあるミステリでした。心理学の先生(葛和)が、相手の心理を読みながら事件を調べていくわ...
2025.04.20 04:15読書感想文 『警視庁鑑識員・竹山誠吉事件簿「凶器消失」』 桜坂詠恋(著) 休暇を取り、金沢に夫婦で旅行に来ていた竹山警部。妻と散歩中にパトカーを見つけ、反射的にそれを追いかけてしまい、そこで旧知の濱口警部と鉢合わせ。事件に首を突っ込むことになってしまった。その事件は、密室殺人事件だった。 テンポの良い警察小説の短編です。『はぐれ刑事純情派』の登場人物のような人情の厚い警部が、その経験を活かして密室殺人事件を解決していきます。前半...
2025.04.19 09:09読書感想文 『ペデストリアンデッキの舞姫』 慎野 たつき(著) 真山里奈は夫との折り合いが悪く、単身赴任で都会に出てきて、保険会社で働いていた。彼女には、人には言えない秘密があった。彼女は夫に内緒で、自宅マンションに整体師の男を囲っていたのである。そんな彼女の周りで不審なことが起こり始める。 感想も紹介も難しいミステリー小説です(笑)。いわゆる**のカテゴリなんですが、それすら言ってしまうとネタバレになりそうなので、伏...
2025.04.12 06:22読書感想文 『紫菊と最後の季節』 兼信資(著) 彼女の紫菊が『アンナロッテ症候群』(感情と衝動が失われる病気)になった。紫菊は、何の感情も行動もなくなってしまった。そしてそのうち永遠の眠りにつく。僕はそんな彼女を連れて、一癖も二癖もある住民たちが住むアパートで、不思議な共同生活を始めた。 まず、Amazonの内容紹介から、本作のメインストーリーは全然想像できませんのでお気をつけください(笑)。わたしはS...