読書感想文 『虚構都市: レヴナント・エコー』 入江博幸(著)

 テクノロジーで世界を管理するクロノス社と、それに反抗する人たち。圧倒的な力で不満分子の抹殺を図るクロノス社は、なぜこの世に生まれたのか。


 短編が4篇で、それぞれが補完し合ってひとつの大きなストーリーとなるハードボイルド的、サイバーパンク的SF小説です。自分は最後の短編を読むまで、それぞれのストーリーが関連していることに気付かず、別々の短編だと思っていました(笑)。モノクロの背景が浮かんできそうな重厚な文体で、湿っぽく金属的な社会を表現しています。最初から最後までこの文体で通して書いたというのは素直にスゴイことだなと思いました。読んでいて疲れるくらいなので、書くほうはもっと疲れたのではないかと。ストーリー自体は、ライトノベルやSFの王道展開なのでわかりやすいのですが、文体が非常に重いので、別の高尚な小説を読んでいる気にさせてくれました。その一方で、すらすら読めるわけではないので、途中であきらめる読者もいそうです。そこがもったいないな、と思いました。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

近未来SF小説『エンタングルメント・マインド』シリーズの特設サイトです!

0コメント

  • 1000 / 1000