読書感想文 『ブラック・マリア』 夢見 絵空 著
そのとき、赤髪赤目の粗暴な(元)女子高生「傷魅挽歌(いたみ・ばんか)」はクラスメイトの「聖真理愛(ひじり・まりあ)」に追い詰められていた。真理愛はいかにも女子高生らしい可憐な女の子だが、正反対の雰囲気の挽歌に惹かれ、自然と親友となっていた。しかし、あるきっかけで二人の関係は真理愛から挽歌への一方通行となる。そして真理愛がバラバラ死体となって発見される。
冒頭、主人公の挽歌と真理愛の決別の場面から始まり、そのすぐあとに真理愛がバラバラの肉片になって発見されるという衝撃的な展開でストーリーは幕を開けます。しかもそれだけでは終わらず、死んだはずの真理愛から挽歌に電話が掛かってくるのです。すごい引きですね。たまらず挽歌は真理愛を殺した人物を捜し始めます。同じように、わたしもストーリーに引きずり込まれていきました。
もう一つのストーリーの柱は、二人の関係です。最初のシーンでその異常性をつまびらかにし、そのあとのシーンから二人の別れや出会い、思い出などが少しずつ明らかになっていきます。フラッシュバックの手法ですね。挽歌と一緒に記憶を辿っていく感覚でした。そこには、殺したいほど憎んでいる相手への愛情がこころの内にあったのです。一切(たぶん……)表現されていませんがそう思いました。自分の中にある完全に正反対の、相反する感情に対する葛藤が理解できる気がしました。愛憎……ですね。
下手をするとファンタジーぽくなってしまう設定ですが、着実な筆致により挽歌はあり得ないほどの男勝りとして、真理愛は巨悪の怪物として現実感を持って存在していました。
表紙から想像していた雰囲気とは少し違う、高品質のクライムサスペンスでした。途中でやめられなくて一気読みしました。たいへんおもしろかったです。
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