プロット
わたしの作るプロットには登場人物の名前、主要な出来事の発生時期くらいしか書いてありません。今回の『エンタングルメント・マインド』シリーズもプロットをほとんど作らずに書いています。
最初にステージだけ準備して、あとは登場人物のアドリブによって劇が進むのを待つというのがわたしの執筆スタイルですので、物語の最初は書き進めることがとても苦しいです。まるで物語が動いてくれません。登場人物たちはどうしたらいいの?とばかりに突っ立ったままなのです。こういうときは、わたしはひたすら散歩します。一周10分くらいの周遊コースを歩きながら、「きみたちはどうしたいのか」と登場人物たちと会話を続けるうちに、自分が散歩していることすら忘れて物語に入り込んでいきます。気が付くと、3時間も歩いていたということも良くありました。わたしはこれを歩く禅と勝手に呼んでいます。
こういうことを繰り返しながら書き進めていくと、あるところから登場人物たちが急に生き生きと動き始めます。まるで自分の意思を持ったかのように。わたしは、想像の中のキャラクターが本当に生きているのように感じられるこの瞬間にとても感動します。この瞬間を味わいたくて書いているという側面もあるかもしれません。
今回のキャラクターたちも、わたしの想像の呪縛から解き放たれ、それぞれが一個の人格を持った人間として物語の世界を生きています。みなさまにもその息遣いが聞こえたら、こんなにうれしいことはありません。
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