読書感想文 『ピアニーズ 』zun0404著
過去の偉大な音楽家たちはピアニーズだった。秘密の旋律を奏でた者だけに現れる音楽の妖精ピアニーは、取りついた人の音楽の才能を極限まで引き出してくれる。その旋律を偶然弾いた現代日本の音大生(三井ケン)の前に、ピアニーが現れた。ピアニーズになって才能が花開く彼に、古くからピアニーを狙う一族の手が伸びる。
過去の音楽家たちが実はピアニーズだったというファンタジーな設定ですが、偉人たちの有名なエピソードをピアニーと関係付けることでリアリティを出しています。偉人たちのおもしろい伝記を並行して読んでいるようでした。
ジュニアノベルのような読み心地の軽快な文体で、登場人物やストーリーに親近感がわきます。登場人物は現代の青年たちに加え、バッハ、ベートーベンなどなど音楽界の偉人が数多く出てきます。読んでいてわたしの頭に浮かんだのは、音楽室に不気味に並ぶ肖像画でしたが、今どきの子たちはアニメ『クラシカロイド』のキャラクターたちを思い浮かべるのかもしれませんね。
序盤、ピアニーによって主人公の才能が開花するところなど、異世界転生ものに通じる爽快感があります。しかし、それに甘んじることなく前進しようとする主人公の姿勢は、成長譚として好感が持てました。中盤からはピアニーを狙う一族の歴史も絡んできて、がぜんおもしろくなってきます。とはいえ、ピアニーズである偉人たちと、ピアニーを狙う一族との対決?は、かなりあっさりしているところは残念でした。もっと深掘りしても良かったのかなと思います。
この設定は音楽家だけでなく変人の多い文学者や数学者でも使えるなと思いました。おもしろかったです。
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