読書感想文 『博テリア 』J◆B著
主人公の一ノ瀬博(ハク)は、メガネ・マスク・手袋着用を正装と言い切り、所かまわず除菌スプレーを噴射する超がつくほどの潔癖症である。なぜか? 彼の目には菌やダニが擬人化して見えるのだ。その彼の職場にキブコ(二宮絹子のあだ名)がやってきた。ガサツな彼女に辟易する博だったが、彼女を守る菌?に興味を持ち……しだいにお互いの距離が縮まっていく。
最初の博の目に(だけ)見える小人たちという場面で、これはもしかしてシャルル・ボネ症候群のお話?と思いましたが、菌が擬人化して見えるというファンタジー設定でした。日常生活の裏側で繰り広げられる菌と免疫システムとの戦いを擬人化して表現するという本作のアイデアは独特でおもしろいと思いました。菌が見えるという設定の『もやしもん』より一歩踏み込んだアイデアだと思います。
博は超潔癖症で理屈っぽく、身近に本当にいたら面倒くさいことこの上ない男性ですが、劇中人物として見る分にはとてもおもしろいです。身の回りの不潔あるあるネタや、こころの声と常識人ぽい外面とのギャップ、周りの人たちが誤解しながら進むストーリーなど、ラブコメディの王道に沿ったもので安心して楽しめました。たいへんおもしろかったです。
少し気になったところ。物語は主人公 博の一人称で語られます。これは、博が見ている不潔な世界を読者に感じさせることに成功していますが、一方で博が知らないはずの情報まで博が語ってしまうシーンがいくつかありました。そこは三人称にしてしまっても良かったかもしれません。
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