読書感想文 『同人小説家悪魔の辞典』あやまり堂 著
同人小説家(著者の定義によると、今ひとつ文才を開花させられぬ同好の小説家)の生態を用語解説という形で書いたものです。的確でありながらも辛辣で、多くの同人小説家が顔を真っ赤にして否定しそうな解説であふれています。わたしも、あーあるあると自分自身の心理を振り返りながら楽しく読みました。
著者ご本人は、これは同人小説家だった過去の自分に向けた批判である、と書いておりますが、同人小説家であるわれわれにも多かれ少なかれ……いや、多いに心あたりがあることでしょう。
小説家などというのは、物語で自分自身のこころを開襟したうえにあれやこれやと批評されてもいい(してほしい)というマゾヒストの権化なわけです。同人小説家は、それになろうという人ばかりなわけですから、多少心理的に逝っちゃっている人が多いのは仕方ありません(笑)。むしろそんな熱情があるからこその創作なのだと思います。
わたしは、本書は同人小説家に向けたエールと受け取りました。同人小説家の執筆に関する空想は大体が(全てが)錯誤であることを自覚し、そしてなお自分自身の大いなる誤解を愉しむことで新たなる地平が見えてくる、のかもしれません。
終始苦笑が止まりませんでした。おもしろかったです。
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