読書感想文 『タイトロープ・ダンシング』晋太郎 著

 売れないインディーズバンドが解散した。三人のメンバーのうち二人は次の人生を歩み始めたが、最後の一人、寛次(主人公)だけはどうしたら良いか悶々とする日々を過ごしていた。三十歳はもう若くない、生活できる人生に切り替えるためのタイムリミットだ。そう感じている彼の前に若い前途有望な若者が現れこころを通わせることになる。

 誰かのため、例えば家族の生活のための人生は平凡だ、確かに若いころのわたしもそう思ってました。そんな平凡な人生は、結局、選ぶのではなく、選ばされるのだと思います。進みたい方面の才能がなければもちろん、才能があっても見いだされなければ、どこかで選ぶのです。主人公も平凡な人生ではなく自分が熱中できる音楽の世界で生きていきたいと思っています。しかし現実は甘くないことも十分わかっていて、その上でもがいているところはうらやましく感じました安易な道を選ばない選べない、それはある種の才能だと思いました。

 中盤から同性愛に至る心理描写が深くなっていきますが、ノーマルのわたしでも普通に読むことができました。なんとなく、漫画『BANANA FISH』ぽい雰囲気(ストーリーは全然違いますが)のこころの交流が、理解できないなりに感動的でした。

 最後は希望を持たせる終わり方で、創作を志す人に勇気を与えてくれます。おもしろかったです。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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