読書感想文 『告白室にて』fanta miste 著
ある教会の告白室に来た女性が、神父に恐るべき内容の告白をする。黙秘義務のある神父は、その女性に対し神の代わりに宗教的な赦しをただ与えるしかなかった。そして次に現れる男性も、先の女性に関係するかのような告白をし……
告白室(告解室)とは、そこに来た人が仕切りを通して神父に自らの罪を告白(告解・懺悔)し、対して神父は神に代わり赦しを与える場所です。神父は黙秘義務があり、どんな大罪であっても他言することはないといいます(現代ではそうではなくなったようですが)。不謹慎にもこれはすごく魅力的な舞台装置だなと思いました。こういった告白室を舞台にした小説や映画は数多くあるのでしょうが、わたしは寡聞にして知りません。
さて本作は、告白室内での告白のみの短編サスペンスです。ほとんどが告白者の語りだけで物語が進みます。主人公である神父も言葉を発しません。それでもドキドキするサスペンスになっているのは素直にすごいと思いました。聴く側の神父にとっては告白だけが事実ですから、どこまでが本当なのかもわからない、という心理的な葛藤もよく描かれていると思いました。
文章全般は会話ではなく一人語りですから改行もなく紙面が文字で埋め尽くされています。それでもスッと頭に入ってくるのは一人語りのリズムがいいからでしょうね。語りそのものは、舞台や洋画で良くありそうな少々大げさな語り口ですが、それがかえって物語を緊迫したものにさせ、読み手をラストまでグイグイ引っ張っていきます。一気に読みました。おもしろかったです。
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