読書感想文　『Gemini: 近未来探偵小説』　敷島 システム（著）

　人探し専門探偵サイトウ・ケイイジのところに奇妙な人探しの依頼が入る。それは依頼人も捜索人も不明なものだった。富豪のお遊びではないかと最初は断っていたサイトウだが、BOSSに押し切られ依頼を受諾。わずかな手がかりからあるホテルに向かうとそこで爆破テロに巻き込まれる。

　主人公サイトウ・ケイイジは、ニヒルでいろいろと批判的ですが、一度受けた依頼はやり遂げるという責任感も持っています。彼の相棒は、ネットから情報を収集する人工知能端末ニュースペーパーJo。貧富の格差が極大になった近未来日本を舞台にしたハードボイルド探偵小説です。

　前作『P%#』に続くシリーズですが、内容は本作だけで完結するため、ここから読んでも問題ありません。内容も文体もハードボイルドな探偵小説であるのは変わりません。

　人探し専門ということで、前作同様、前半は死体が出てきません。それでも「俺を探してくれ」とだけ書かれた依頼はとても興味をそそられます。その手紙だけから手がかりを探し出していくあたりもカッコいいです。

　今回は貧困層と富裕層の間の闘争が裏に隠れていて、徐々に大きな陰謀に巻き込まれていきます。相変わらず主人公のサイトウは巻き込まれることを嫌がっていますが、依頼の人探しを続けていくと、否が応でも巻き込まれてしまうというところがおもしろいです。そしてラストは少し寂しい気持ちになりました。

　たいへんおもしろかったです。シリーズ続編を希望します。