読書感想文 『整然たる備蓄』 山川櫂(著)
34歳主婦 吉江咲子は鬱屈としていた。昔取った杵柄でピアノ教室を始めてみたが、晴れない気分は変わらない。そのうちにいやなことが立て続けに起こり、ついに彼女は家を飛び出す。伯父の別荘で出会ったのは若い画家だった。
我慢し続けてきた主婦が衝動的に全てを捨てるまでの感情の高まりを丁寧に描いています。主人公の咲子目線で見るとちょっとかわいそうなくらいな出来事が数多く起こりますが、シチュエーションとしてはありがちなことを考えると、周囲の人たちは咲子が思ってるほど気にしていないのかもしれないと思いながら読みました。そういった面も含めて、女性の精神面をうまく描いているなと思いました。
精神的に疲弊した咲子は全てを投げ出して別荘に逃げ込みますが、そこで新しい男と出会います。ドロドロの愛憎劇を予感させますが、あっさり風味でした。これも現実的な感じでした。
全体に女性の情動をリアルに描写しており勉強になりました。おもしろかったです。
作中、料理のシーンがいくつかありますが、かなり細かく書かれていて作者は普段料理をする方なのかなと想像しました。おいしそうでした(笑)。
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