読書感想文 『神様とゆく!11泊12日小説を救うための読書の旅 』 弍杏(著)
彼女の前に突如現れた、オバケのQ太郎のようなタコ型ウィンナー形状の未確認生物(UMA)は小説の神様だった。ヤツはこの世から小説を消すと宣言する。それを阻止するため、彼女はとびきりおもしろい小説を10冊紹介しなければならない!
主人公(作者)がドタバタ劇を交えながら軽妙な語り口でおすすめ本を紹介してくれる書評小説。そんなジャンルあるのかわかりませんが(笑)。紹介してくれる本は全部おもしろそうなので、機会を見つけてぜひ読みたいと思います。
読んでいて作者は本当に本が好きなんだろうなと感じました。紹介してくれる本への熱い想いが行間からも伝わってきて、わたしも大学生くらいまでは図書館や本屋に行くのに無上の喜びを感じていたことを思い出しました。今では……歳を取ったのかな。
冒頭の、最近おもしろい本がないという嘆きはきっとセルパブ界への𠮟咤激励なのでしょうね。そう受け取りました。「宝物みたいなきらきらした小説」を自分も書けたらいいなと。
江戸川乱歩は過去に大方読んだ気がするのですが、おすすめ三冊をまとめた小説(?)を読んでも全然思い出せず、こんなお話だっけ? と思いながらも、これはおもしろくなりそうと期待していたところに神様乱入で台無し、というのもおもしろい趣向でした。気に入った本にインスパイアされた小説ってもしかしたら新機軸になるのではないかと思いましたが、ここまで考えてはたと気づきました。この趣向は『Mash Up!』(隙間社様)ですでに形になっていますね。さすがです。
事前のイメージではもっとハイテンションかと構えていましたが、どちらかというと親しみがわく落ち着いた作風に感じました。なのでむしろシリアスなテーマが合うような気もします。
言い回しも楽しくて、「風邪でオブラートを使い切ったのでもう包めない」とか、「かわいいトラウマちゃんがエサのにおいをかぎつけて」など、自分にはないセンスがうらやましいです。
おもしろかったです。今後も期待しています。
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