読書感想文　『我が亡き後も』　丸鬼（著）

　三六探偵事務所に訪ねてきた老婆の依頼は、事故死した息子の死の真相の調査だった。警察は、泥酔して川で溺死したとして調査を打ち切っていたが、母親はそれを信じていないのだった。三六が調査を始めると、他殺を示唆する証言や偽造紙幣が現れて、事件は意外な方向へ転がっていく。

　実に堅実なつくりの探偵小説です。事故死の真相を探るなかで偽札を発見し、これが事件解決の手がかりになる、という引き込まれるストーリラインになっています。

　おもしろいのは、この探偵は聞き込みのときに、自分が探偵であることを明かすんですね。そうすると、もちろん相手は警戒するわけですが、そういう不利な状況でも正直に聞きこんでいくことで手がかりをしっかり掴む、という過程がリアルな感じを出していて感心しました。

　終盤は、探偵小説らしく、一対一で犯人と対峙して追い詰めていきます。やるせない雰囲気を出しつつ、さあいよいよラストとなって、どう終わるのかな、と思っていたら、突然ぶっつりと切られて終わってしまい、あっけにとられました（笑）。あとがきに、この終わり方でいいのかどうかをAIに訪ねているというのが明かされ、いや新しすぎんだろ、と思いました（笑）。おもしろかったです。