読書感想文 『駆け出しミステリー作家と消えた記憶の同窓生』 和泉 綾透(著)
大学のいつものカフェテリアでノートパソコンを前にぼんやりと憧れの氷室さんのことを考えていた新進気鋭(?)のミステリー作家 都並大祐に、見知らぬ女子大生が話しかけてきた。彼女は都並のことを良く知っているという。シリーズ第5弾!
中学校、高校のときのクラスメイトを全員覚えている人は少ないんじゃないでしょうか? 今回のお話はそれに類するものです。都並の高校時代のクラスメイト 齋藤芹那は、何かと理由をつけて彼に近づいてきます。彼もまんざらではなくあれこれと世話を焼いてあげるのですが、それは彼女を死体にしよう(作中作)という下心があったからでした。しかしその理由を推理していくにつれ、彼女に対する興味は薄れていきます。ここのこころの離れ方が、ある意味残酷に感じました。友人関係が本作のテーマなんでしょうね。
終盤に差し掛かったあたりで彼を取り巻く変人たちに卒業が近づいているということがあからさまに表現されます。その現実を目の当たりにして、彼はどう感じたんだろうかと思いました。少なくとも読者のわたしはこの物語の終わりが近づいているんだととても寂しくなりました。
たいへんおもしろかったです。ぜひ次も書いてください。できれば誰も卒業しない永遠の大学生のままで。
0コメント