読書感想文 『Sの世界、Mの世界』 野浦湘(著)

 弾の込められていない銃で撃たれた少年は、まるで本当に撃たれたようにケガをした。似たような不可思議現象が世界各地で起こり始めていた。これは何かの前触れなのか? という表題作を含む3編の短編集。


 表題作の『Sの世界、Mの世界』は、思い込みの力が物理的に作用する世界への変容を描いています。これは量子力学の観測問題による現象と説明するところがSFですが、どちらかというと引き寄せの法則のようなスピリチュアル現象ですね(作中でもどちらかというとそちらの論調)。シンギュラリティに向かって謎の不可思議現象が増えていく、といういいところで終わってしまいます。続きが読みたいです。

 次の『死の星からの声』。すでに滅亡したはずの星(ドレイクⅡ)から宇宙船にSOSが届き、戸惑いながらも救助に向かう宇宙船クルー四人のお話です。宇宙や高次元の知性との接触などSF色に溢れるストーリーでした。お話の筋は違いますが『太陽の簒奪者』(野尻抱介)のイメージをギュッと凝縮したような短編でした。

 最後の『異説・シンデレラ』は、シンデレラとSFを混ぜたようなお話で、最後に行くほどコメディぽくなっておもしろかったです。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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