読書感想文 『クソの詰まった牛乳パック: 第1巻』 BLACK NANDI(著)
全国規模のヤクザ組織「山際組」と「黒河会」を敵対させ、ぶっ潰すのがオレのカルマだ。ギターを掻き鳴らすようにマシンガンをぶっ放せば、ヤツらは踊る踊る踊る。なんという充実なんだ。快感だ。
主人公はキレて上司の女をぶっ殺したところを公安の土尻に捕まります。彼は罪を問われない代わりに非合法の仕事をすることになります。土尻が描く絵は、ヤクザ組織をぶっ壊すこと。彼は仲間の柴田とともに全国を回りマシンガンをぶっ放していきます。容赦なくヤクザに銃弾を撃ち込んでいくところはバイオレンス小説といっていいでしょう。しかし凄惨な場面を描写するだけでなく、主人公のこころの中に潜む異常性を音楽バンドや牛乳パックなどで例えながら表に出していきます。しかもその異常性を否定も肯定もしないところに純文学的な匂いもするハードボイルド小説でもあります。
誤字脱字は当たり前、主要人物の名前すら間違えます(土尻は途中から戸尻になっている)。文章も粗削りでわかりずらい表現も多々あります。しかしこれは主人公の一人称、つまり語りなのです。普通なら首を傾げるような文章なのに、わたしは興奮してイキッた主人公の情動を感じました。彼の中に渦巻く異常性が、紙面からにじみ出てくるようでした。計算された構成、キレイな文字の並び、上手な比喩、そんな文章はクソだと言われているようでした。そう思わせるほど個性が強いと思います。たまにこういう作者が見つかるのでセルパブ読みをやめられません。
これは第1巻ということです。ぜひ小さくまとまらずに、この勢いのまま突っ走って欲しいと思います。期待しています。
0コメント