読書感想文 『にんぎょばなし』 戸田 鳥(著)

 釣りをしていたら銛の刺さった人魚が釣れてしまった。人魚は人間になって踊りたいんだという。青年が人魚と過ごした数日間のお話『人魚とダンス』を含む、人魚を題材にした短編集。


 読んでまずポニョが脳裏をよぎりましたが、ポニョが子ども向けのカラフルで陽気なアニメに対し、この短編集は落ち着いた色使いの色鉛筆画をイメージしました。古今東西、人魚にまつわるお話は人間の欲望に絡む不吉な物語が多いわけですが、この短編集(最初のお話を除くね)では海辺の漁村で営まれる人魚と人間の交流を静かに綴っています。虚飾を排した軽やかな言葉遣いが心地良く、読んでいて潮騒が聴こえてくるようでした。

 最初の短編だけ他と毛色が違っていて、欲望が大きくなっていく様を人魚の大きさで表現した寓話的で少しホラーのお話でした。

 わたしは二篇目の『人魚とダンス』、続く『送葬』がコミカルでおもしろく、もっと読んでいたいと思いました。

 おもしろかったです。

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