読書感想文 『Part2: 近未来探偵小説』 敷島 システム(著)
人探し専門探偵サイトウ・ケイイジに複数の人から瑞売イチカズを捜してほしいとの依頼が舞い込む。その後、相談を持ち掛けてきた一人が惨殺される。ミンチになるまでめった刺しにされるという猟奇的な方法で。そして同じような殺人が次々と起こる。犯人の目的は一体何なのか? 瑞売イチカズとは何者なのか?
タイトルが『Part2』となっていますがシリーズ3作目になります。今回の事件ではBMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)がキー技術になっていて、それをめぐって国家権力がいくつも動いており、必然的にケイイジも巻き込まれていきます。いつもは巻き込まれることを嫌がるケイイジですが、今回は自分にも関係する人物だからか自ら進んで巻き込まれていきます。
ケイイジが主人公なのですが、本作ではもう一人の主人公ともいえる人物が登場します。それがシリーズ1作目『P%#』でケイイジの敵(?)だった吉良計です。彼は総理大臣付きというとても便利な立場の男で、しかも病的に仕事をするため、今回はケイイジにいいように使われます。そこの関係性も見どころだと思います。
連続殺人の謎解きはそれほど劇的なところはないのですが、これは本作がミステリというより「人間らしさ」とはなにかを主題に置いているからでしょう。作中ケイイジはしきりに勘を頼りに捜索を進めていきます。これも機械に対するアンチテーゼを表現しているのでしょうね。
2030年代の近未来が舞台ですが、人々の暮らしはそう変わらずという描き方なので入り込みやすいと思います。ニヒルな文体に厭世的、洒脱的な表現を多用する一人称で、読んでいてニヤリとさせられます。
たいへんおもしろかったです。読者がここにいますのでぜひシリーズ続けてください。
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