読書感想文 『破く女: ~脅迫観念~』 青色いく(著)

 如月真優は熱中症である。興味のあることをやり始めたら毎日疲労困憊になるまで熱中する。その状態が毎日続く。飽きるまで続くのだ。今回真優が熱中しているのは、紙を細かく破ることだった。


 躁うつ病を患っている主人公 真優の、症状の一つである強いこだわりを描いた短編です。真優は何かに熱中し始めると、倒れるまで集中して続けてしまいます。そしてそれが普通だと考えています。それ以外は全く普通の女性です(しかもとびきりの美人)。彼女は何かに熱中していなければ焦燥と不安で精神不安定になってしまいますのです。こう書くと辛い物語かなと思われるかもしれませんが、この本はそんな悲愴感は一切なく、淡々と、ときにコミカルに真優の心情を描写していますので、読んでいてなんだかホッとします。どこか達観した書き方で、このこだわりを個性と捉える作者のおおらかさと眼差しの優しさを感じました。おもしろかったです。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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