読書感想文 『駆け出しミステリー作家とエメラルドの妖精』 和泉 綾透(著)

 今回殺される人は、駆け出しミステリー作家 都並大祐に言わせると、「東京ドーム規模のステージに立っても満場が息を呑んで静まり返るほど超絶に可愛い」新入生の春日小町である。彼女はスナイパー女子 黛夏南に首を絞められたいという。シリーズ第10弾!


 早くも10作目です。駆け出しミステリー作家の都並大祐が主人公兼語り手で、彼の元には(もちろん作中作内で)殺されたい人(しかもほぼ女性)が集まってきて、彼女らを作中作内で殺してあげることによって、彼女らのこころの底に溜まっている澱《おり》を描(掻)き出すというストーリーです。

 春日小町に何があったのか? ということは結局明らかにならずモヤッとするわけですが、それはこのシリーズでは普通のことで、このフワッとした印象が変なリアリティを生んでいるのかもしれません。なぜなら現実でははっきりわかることのほうが少なく、特に男女間のことはわからないことだらけなのですから。

 相変わらず作者の長口上は健在、というより、さらにひどくなっています(良い意味で)。ストーリーを追うよりも文章のリズムに身を任せて読みました。おもしろかったです。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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