読書感想文 『オケラちゃんと蝶』 白米米粒(著)
その美しい容姿と優れた才能から全校生徒の憧れの的である胡蝶《こちょう》は、自分の見た目ばかりしかみない人々にうんざりしていた。あるとき胡蝶は、自分のことを知らない素朴な下級生 美妙《びみょう》と出会い、お互いに惹かれ合う。
胡蝶と美妙の二人の女子高生が百合に到るまでの短編。なんといっても名前がいいですよね。美妙は『なんとも言えず美しい』という意味なんだそうです。胡蝶は学業もできる才媛、美妙は名前負けしているおぼこい娘で、自分の内面(努力もしてるのよ)も見て欲しいと思っている胡蝶が、純朴な美妙に惹かれていくというありがちな設定ではあります。最初は、なんだかどこかで読んだような……と思いましたが、すぐに物語世界に引き込まれました。エピソードがごく少なく、しかもあっさりと書かれているのですが、わたしの中ではなぜか長編の広がりをみせて、今読み直してもこんなに短いお話だったかしら?と驚いています。終盤、急にアダルトになってしまうのが少し残念で、胡蝶と美妙のつかず離れずのこころの揺れ動きをもう少し掘り下げて、二人が期待に胸を躍らせるという余韻を楽しみたかったなと思いました。
0コメント