読書感想文 『ナチスのお札』 ぺしみん(著)

 僕のクラスで牛乳ビンのキャップ集めが流行った。そのキャップの裏に遠野君が絵を描いた。それはとても精彩で、まるでプロが描いたようだった。遠野君が描いたキャップはクラスで注目を集め、キャップ10枚と交換するようになる。それが始まりだった。


 タイトルにナチスと入っていますが、ドイツのナチズムとは関係なく、那智君という金持ちの息子のあだ名です(笑)。このお話は小学生のクラスで自然発生的に生まれた資本主義経済の顛末をコミカルに描いた短編です。

 牛乳ビンのキャップ(丸い紙のフタ)本位貨幣から那智君が持ち込んだノートを使った兌換貨幣に移行していくくだりや、遠野君の絵や工作のスキルが価値を持っていく過程、外資(女子)が乱入してバブル経済になっていくところなど、資本主義経済の基本的なところがおさえられているなと感心しましたし、たいへんおもしろかったです。

 わたしが小学生のときに集めていたのは、一升瓶のキャップ。残念ながらそれに価値を見出していたのは数人でしたので、貨幣のように流通することはなかったのですが(笑)。グリーンピースごはん、苦手だったなあ。お代わり争奪戦など懐かしい要素も一杯でした。ウン十年前の小学生のときのことを思い出しました。

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