読書感想文 『カルネアデスの咎人』 和田真実(著)

 ヤングケアラーとして若い時期を棒に振り辛酸をなめた三木本こずえは、国会議員となって、自らの体験をもとに「重度要介護状態にある高齢者に対する安楽死推進法案」を提出した。この法案は賛否両論を巻き起こし、かつてのこずえと同じような状況にある「わたし」も法案が成立することを心待ちにしていた。短編。


 介護という現代日本の抱える大問題に真正面から向き合った小説といえるでしょう。義母の介護に追い詰められていく女性の心情が残酷なまでにリアルです。つい自分の身に置き換えてみてしまい恐怖を感じました。

 わたしたちはいずれ必ず老いて死ぬのですが、昨今の医療技術の進展、栄養状態の改善などにより、老いてから死ぬまでが長くなっています。結果、寝たきりになったり、認知症になったりで、介護が必要になることも少なくありません。ただ、施設に入所できた人はラッキーで、ほとんどの人は入所待ち、もしくは費用が高くて入所できない状態だと聞きます。そうすると、親族が面倒をみなければならなくなって、悲惨な状況に陥るわけです。はっきりいって介護はかなりたいへんです。旧ヘルパー2級の資格を持っているわたしでもそう思います。介護する側される側の関係が最初良くても、介護する側はその大変さと、現実と理想のギャップに、そのうち壊れてくるものです。サポートが必要なんです。カルネアデスの舟板のような状況に追い込んではいけないのだと思います。

 わたしの親はまだ健在ですが、いつか介護が必要になるのは間違いないですし、自分自身もそうなるでしょう。昨日まで元気で一晩寝たらぽっくり死んでいた、という理想の逝き方を夢見ますが、難しいでしょうね。少なくとも若者世代に世話をかけないように準備をしておきたいと思います。

 こころにダンベルを持たされたような重いお話でした。考えさせられました。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

近未来SF小説『エンタングルメント・マインド』シリーズの特設サイトです!

0コメント

  • 1000 / 1000