自作小説を英訳して英語圏で出版してみたい! その3
物書きなら誰しも憧れる自作小説の翻訳、および出版。前回は、テキストエディタMery上で機械翻訳DeepLを使えるようになるマクロを作ってみた、というところまで紹介しました。今回はSF短編「ピクト*ガール」を英訳して、その際に感じたこと、注意点などを紹介します。
まず日本語の原文を全文翻訳します。原文の英訳と、英訳文の日本語翻訳(確認用)に、18000字でおよそ500秒掛かりました。
次に英訳文と日本語訳文を一文ずつ読んで、違和感のある個所があれば日本語、もしくは英語を直して再翻訳して確認、ということを繰り返していきます。
このとき気を付ける必要があるなあ、と思ったことが以下3点。
一つ目は、人称代名詞です。日本語では「彼の」「彼女の」などの人称代名詞は省くのが普通なのですが、英語では文中に普通に入ってきます。機械翻訳では「彼」と「彼女」の区別がうまくできないため、例えば、原文では女性の行動を意味している文なのに、翻訳文では男性の人称代名詞になっていたり、その逆だったりが多々ありました。そのシーンでの登場人物が、男性のみ、もしくは女性のみであれば、どちらかの人称代名詞に修正してしまえばいいのですが、混在しているときは、英語の文をよく読んでどちらの性別なのか確認して修正する必要がありました。
二点目、固有名詞についてです。登場人物の名前が漢字の場合、その読み方が訳すたびにマチマチになります。カタカナでも、英語にしたときに毎回変化してしまいます。例えば、「ユウリ」は「Yuuri」にしたいのですが、「Yuri」になったりしました。他にも、小説内で造語のようにして使いたい固有名詞が、文脈によって変換されてしまいました。例えば「インテリジェンスレンズ」を訳すと、「intelligenced lens」や「intelligence lens」など微妙に変化していました。多分DeepLの有料プランならシステム上で辞書を作って対応できるのでしょうが、無料プランではそういうことができないので、最初に備忘録(辞書)を作っておいて、訳文を見ながらその都度修正する必要がありました。
三点目、詩的な文章。日本語では、主語を抜いたり、韻を踏んでみたり、逆の修飾語を使って意味を際立てたり、などの技巧をこらした文章は正しく英訳できないことが多い印象でした。なんというか、意図があいまいな原文をAIが悩みながら訳しているのが見えるようで微笑ましかったりしましたね(笑)。そういうときは、できるだけ論理的な文章に置き換えてやれば、AIも意味をわかってくれてキチンと訳してくれます。
とまあ、以上3点を気を付けながら、全文を見直していくのですが、ちょっと文章が固いかな、と感じたときは、DeepL Writeを使いました。DeepL Writeは、より適切と思われる単語や、文章を提案してくれるので、すげえ、となりますよ。ただ、あまりやりすぎると元の文からどんどんズレていくのでほどほどに使うのがいいと思います。同じく、翻訳自体も凝ろうと思えばいくらでも凝れてしまうので、あるところであきらめるという意識も必要ですね。
これでSF短編「ピクト*ガール」の翻訳が終わりました。新作ひとつ書くくらいの手間が掛かりましたが、英語が苦手なわたしでもそれなりの英訳版を作れたのではないかと。
次回は、EPUB変換とKDP登録についてレビューします!
追記)
人称代名詞を修正しながら思ったのですが、英語の小説では、女を男に誤認させるような叙述トリックってどうやって表現するのでしょうね? theyを使うのもバレバレな気がしますし……。叙述トリックの本を翻訳するときに悩むかも、と思いました。
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