読書感想文 『プレイジディアム ファシリタス』なお ゆきを著

 かつて地上では、人間と動物は平和に暮らしていた。人語を解す動物はアミークスと呼ばれ、人間と結婚することもあった。しかし人間と動物たちの間で争いが起こり、人間はアミークスから言葉を奪って巨大な保護施設「プレイジディアム ファシリタス」(PF)に移住する。地上は動物たちによって支配され、人間は動物たちから離れた世界で生きることを選択した。数十年後、PFに住む小学6年生のシュウは、PFの窓が破れる瞬間を目撃する。緊急事態の中、シュウはかねてからの想いである地上へ向かって進み始める。その歩む先にあるのは……!

 動物が人間と同じように意思疎通していた世界という独特の設定のSF小説です。閉鎖空間であるPFの息詰まるような雰囲気を良く描いています。PF脱出もハラハラドキドキしながら読みました。人間は生きるために動物を食べなければならない、そしてその動物は友だちでもあるという設定にすることで、生きるというテーマを際立たせています。答えの出ないテーマに向き合おうとする意思を感じました。

 ラストは衝撃的です。すべてひっくり返されます。わたしもひっくり返りました。これは賛否あると思います。わたしはこの結末ではなくテーマに沿った終わり方でも良かったかな、と思いました。ただそれまではとてもおもしろく読みました。続編があるのなら読んでみたいと思いました。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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