読書感想文 『伝奇 元亨伝』前島節月 著
常州に住む程饗は幼いころ、育ての親である叔父が役人に辱めを受けたことに衝撃を受け、その役人への仕返しを心に秘めて勉学、武術に励む。文武両道の青年に成長した程饗は、政府の役人になるための試験を受けに京に上る。
中唐(8世紀半ば)の長安が舞台の伝奇小説。伝奇なだけあって、願いが叶う仙丸(仙人にもらった丸薬)や化け物クラスの巨大虎や巨象が出てきます。
歴史小説らしく雰囲気のある固めの文章です。会話文、心情表現の直前にそれを吐露する人物の名前のみ表示するなど、独特な小説作法もありますが、読み始めた時の印象は『三国志』(吉川英治著)に似た感じだなと思いました。仁徳のある主人公程饗のキャラクターも、劉備と重なりました。ただ、オーバー表現が多い『三国志』よりもあっさりしています。
主人公は知恵と勇気と特殊能力(仙丸)で化け物退治する一方で、極悪人は登場しない青少年向けストーリー運びとなっています。わかりやすくておもしろかったです。
巨象を退治して突然終わります。えっ?となりました。このラストは狙ったのか、続きがあるのか、書き疲れたのか、ある意味すごい終わり方だと思いました。
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