読書感想文 『転送少女症候群、もしくは黍島柘十武の長い回想』藍田ウメル 著

 僕こと黍島柘十武(ツトム)の前に突如現れた遊(ユウ)という女性。あけすけなユウは、ツトムの部屋に勝手に転がり込み二人の共同生活が始まる。他人でもなく恋人でもない微妙な距離感の中で、ユウは自らの秘密を打ち明ける。そしてツトムも「連中」に狙われ始める

 ユウは恋をするとどこかに転送してしまうという不思議能力の持ち主です。恋をすればするほど、その相手には近づきたくなるものですが、ユウは逆にどんどん離れていってしまうのです。切ない設定ですね。中盤から、ユウの能力を利用しようとしている「連中」の存在が明かされ、不穏な雰囲気になってきます。そしてラストは……すみません、理解が及ばずです。これは『ビューティフル・マインド』ってことですか? ですよね?

 インタビューを文に起こしたという設定で、ツトムの話し言葉で語られる一人称ですが、独特の文体となっています。改行は最小限で文字が詰め込まれているように見えますが、読みにくいということはありませんでした。読んだイメージは、舞城王太郎と綿矢りさを足して二で割った感じです。この個性に嫉妬です(笑)。

 この本をダウンロードしたのは2016年6月でした。それから2年がかりで読み終えました。読んでると感傷的になってきて一気に読めなかったです。悪い意味ではありません。永遠に出会うことのできない彼女(それが転送という設定で表現されているとわたしは理解しました)を探し続ける、読み終わった後はより一層こころが締め付けられる恋愛小説でした。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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