読書感想文 『甲子園のプロデューサー』ききようた 著
ときは戦後十年たったころ、甲子園そばのさびれた酒場は高校野球好きの男たちのたまり場だった。そこに現れた天草という男、実は彼は甲子園で行われる高校野球大会を盛り上げ、日本の文化にまで高めるために派遣された魔物だった。彼は魔力を使い、甲子園での野球ドラマを演出していく。そしてその感動的シーンがいつしか「甲子園には魔物が棲んでいる」と言われるようになる。
甲子園に数多ある感動ドラマが、実は魔物によるプロデュースだったというおもしろい発想のお話です。魔力で勝敗に介入するわけではないところに作者の誠実さが伺えます。その魔力は甲子園の土や帽子のつばの裏に使われ、あとでネット検索してなるほどと感心しました。そして高校野球の裏にある人情エピソードも王道ですがグッとくるものがありました。
天草も最後は魔力が尽きて甲子園プロデューサーから引退するわけですが、そこでサプライズがあって、えっ!となりました。全然気付かなかった(思い付かなかった)です。
まさに今、第100回の記念大会中ですから、読みながら過去の名シーンに思いを馳せることができました。手ごろな文量と、手堅い文体で読みやすかったです。おもしろかったです。
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