読書感想文 『世界複製: 人類滅亡から一一八〇三日目』 浦葭広(著)
致死性ウイルスのアウトブレイクによって人類を含む地球上の生物が死滅。残ったのは植物と1体のロボットIHRタイプYナンバー6(通称ロク)だけだった。ロボットは持ち主の指示通り家を守り続ける。
人類が死滅してからのロボットだけの世界を淡々と描写した短編SF。一文一文がロボットのプログラムコードと実行結果のように書かれています。そこには感情が差しはさまれる余地がありません。特にロクが故障したときの描写は機械の冷たさを感じさせるものでした。
複製される世界は完璧に秩序だっていて、異常は即排除されます。その様はゲーム『シムシティ』のようです。この本はコンピュータによるコンピュータだけの世界秩序というものを思考実験した一つの結果だと思いました。
このように作者は理系なのかなと思わせる文体です。図面を読んでいる感じでした。理想的な図面には、その図形を二次元で説明するために必要な情報が全て詰まっています。一方で必要以外の情報は一切ありません。線一本、言葉一文に至るまで、全て意味のあるものなのです。この本は、ロボットによる複製世界を文章という図面に落とし込んだもののように感じました。
正直、一般受けしないとは思いますが、わたしにとってはとても興味深い考察でした。
0コメント