読書感想文 『センチメンタルジャーニー: 恋人の自殺を止めるために過去に舞い降りた。デモと火炎瓶が飛び交った昭和44年・1969年の国際反戦デーの前日から翌日までの感傷的な物語。』 狩谷 祐一(著)

 ごく普通のタクシー運転手 桐野は、ふとした出会いから自分のタクシーがタイムマシンに改造される。改造したのは若い科学者 雁谷。彼はタイムマシンタクシーを使って時間旅行という社会実験をしようとしていた。最初の客は藤崎という食品貿易会社の社長になる。藤崎は過去に戻りかつての恋人を救おうと考えていた。

 タイムマシンとタクシーの組み合わせが古き良き時代のSFを感じさせます。技術的な描写は少なく、どちらかというと人間ドラマが主軸になっています。

 作者はおそらく現代から見た1960年代の若者の熱気を描きたかったのでしょう。現代と60年代を対比させるには、現代人を60年代に送るしかありません。そこにタイムマシンの必要性が出てくるのですね。

 タイムトラベルにはパラドックスがつきものですが、このパラドックスをうまく説明できれば物語のリアリティを向上することができます。この本の中では、パラドックスは波紋限界論で解消すると説明しています。わかりやすい説明でした。

 短編で気軽に読めました。おもしろかったです。シリーズ化も考えられているのでしょうね。期待したいです。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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