読書感想文 『オータム・ブラック~法律事務所殺人事件~ 弁護士穂積晃シリーズ』 乙野二郎(著)
弁護士の穂積は、かつての指導担当だった冬川の弁護人に選任された。冬川は自分の事務所に火を付け、そこにいた事務員の女性を焼き殺したとされる。証拠も証言もそれを立証するに足りるが、動機についてのみ冬川は黙秘し続けていた。そして裁判が始まる。
ストーリーは放火殺人の動機を解こうとするものですが、あくまで静かに淡々と調査や裁判が進みます。やれることが限られるなかで主人公の弁護士が思い悩む姿に、ドラマや小説にあるような名探偵やどんでん返しはそうそうあるものではない、これが実態なんだと作者が訴えかけているように感じました。そうだからこそ、この小説は他にはないリアリティがあるのだろうと思います。ラストもやり切れない気持ちになりましたが、これが現実なんですね。
文章も内容と同じく実直な感じで読みやすかったです。文庫本半分くらいの分量で気軽に読み始められました。
本筋とは別に、実務を経験していないと書けないだろうなという業界の裏話?も多く、大変興味深く読みました。シリーズ化されているとのこと。他も読んでみたいと思います。
この本のようなリアリティ重視も好みですが、この作者によるもっと派手な法廷闘争も読んでみたい気もします。もしかしたらもうあるのかしら?
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