読書感想文 『君が秋々』 吉田ばに(著)
大阪育ちの女子中学生 望海は、父親に連れられてやってきた和歌山の漁港で、船頭の娘(晃)と出会う。たった一日で親友のように打ち解けた二人。わずか数日の出会いは記憶に残る思い出の1ページとなる。
瑞々しい感性が光る短編です。大人と子どもの境目にいる女子中学生の心情が、わたしの汚れたこころを洗い流してくれるようでした。感情的になるほど幼くはない、かといって打算や達観するほど大人でもない、思春期のころの夢見がちなこころは輝きに満ちています。自信に満ち溢れていると思えば次の瞬間には不安にさいなまれる、このこころの揺れ動きを同性の友達との関係性でからりと表現しています。
成長し大人になったとき、かつての友達と会うかどうか……わたしも多分会わないだろうなと思いました。ガラス細工のように美化された思い出は、現実というハンマーによっていとも簡単に壊されるものです。思い出を大切にするということはそういうことなんだなと思いました。
なんというか、水彩画を鑑賞したような読後感でした。
あとタイトルの意味がいま一つピンときませんでした。この本の内容をどう言い表しているのでしょうか? わからないのはわたしだけ?
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