読書感想文 『カラーバーボーイ』 ササキ リュウイチ (著)

 極貧アルバイターの森口健太郎は、女性タレントのさくら鈴に憧れ、テレビ業界に就職を夢見ていた。最後のチャンスとして受けた制作会社カミナリテレビになぜか引っ掛かり、紆余曲折を経て超一流軍団セルプロダクションに”期待のホープ”として縁をもらう。はてさて、彼はテレビマンとしてやっていけるのか? その恋は実るのか?

 前半は、テレビマンになる前の主人公のダメっぷりを笑いで包みながら描いています。彼は自分のネガティブな内面を知っているがゆえに、外面ではポジティブな言動・行動をしています。しかしそのポジティブさが、偶然が重なって人の目にとまるのです。それは勘違いなのですが、とんとん拍子に話が膨らんでいきます。しかし彼は勘違いによって得たチャンスを、彼は自分の実力とさらに勘違いして掴みます。成功を掴むには、そういった図々しさが必要なんだなと思い知らされました。

 後半は、彼がテレビマンとして成長していく姿が描かれます。はっきり言うと、挫折ばかりです。そこには物語の前半でみせていたダメっぷりは影を潜め、血反吐を吐いても地面をはいつくばっても粘る彼がいました。すこしカッコいいと思ってしまいました。

 わたしたちが常日頃ボーッと見ているバラエティ番組も、多くの人たちの冷汗・油汗・血反吐によって作られている、ということが良くわかりました。この本はそんなテレビ制作の裏側を舞台に若者の成長を笑いを交えてさわやかに描いています。たいへんおもしろかったです。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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