読書感想文 『天皇の神通力: ~即位を巡る暗闘~』 朝野白露(著)

 小宮山崇、大学生。彼は日本を良くするため、権力を手にすることを目指している。彼は総理大臣の娘と付き合い、皇室にも近づこうとしていた。彼にはイビルアイという特殊能力があった。


 出世して日本を良い方向にかじ取りをしたい、という夢を持つ大学生 小宮山君が主人公です。そのためには東大に行って学歴に箔を付けないといけない、とか、総理大臣のお宅に持っていく手土産は印象付けつつ嫌味にならないような物にするべき、とか、あれこれ策略をめぐらせる彼の思考回路に笑ってしまいました。わたしはてっきり、権力志向の彼が成り上がっていくという路線でストーリーが進むのかと思っていたのですが、途中から急に特殊能力バトル系になりますので面食らいました。本作はイビルアイシリーズの2作目とのことですので、1作目を読んでいれば予想がつくのかもしれませんが……、初見ではそこで読むのを諦める読者が出そうです。でもそこからの展開もおもしろいので、ぜひ読み続けてください(笑)。わたしはそれを知らずに読みましたが、特に違和感はありませんでしたので、本作から読んでも問題ないと思います。

 中盤からは、天皇の皇位継承を邪魔しようとする悪役との特殊能力を駆使したバトルになっていきます。そこに三種の神器、ヲシテ文字など、日本の神代の歴史が絡んでくるので、歴史好きにはたまらない展開だと思います。

 現在の皇室をモデルにしていて、しかも登場人物に当てはまる実際の人物も多くいますので、これはなかなか商業出版しにくいだろうなと、逆に言うと、個人出版ならではの小説ですね。おもしろかったです。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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