読書感想文 『クソジジイ =空想爺』 一之瀬和郎(著)
呆然とソファにすわっていると、認知症の兆候と間違えられて……から始まる自虐と考察の私小説。
年老いて売れもしない創作物を量産している(と自虐的に語る)作者の、日々虐げられる日記です。虐げられている自分を自虐的におもしろおかしく描写し、その理由に迫っていきます。その迫り方がまた壮大で捉えどころがなく、おかしいながらも考えさせられます。ある意味、悟り(ヤケクソと語る)の境地なのだろうと思います。作者の念願は、「限られたごく一部の者が特権的に享受している困難な学びを、誰でも理解できるようにすること」と言っています。これはわたしも共感しました。
そのほかにも人生の妙域に達した作者ならではの含蓄のある言葉や考えが一杯あります。おもしろかったし勉強になりました。まさしく「精神の錬金術であり、想像力のアクロバットという文芸」でした。
惜しむらくは短いこと。この本の半分は著書紹介なのです(笑。もっと本編を読んでいたいと思いました。
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