読書感想文 『落雷: 泉下からのメッセージ』 富岡 秀雄(著)

 雷が落ちると、そこに思いを残して亡くなった人が戻ってくる。傑作小説を書き上げながら心臓発作で死んだ若者、画期的な研究をしていた大学教授、濡れ衣を着せられた青年、彼らがこの世に残した思いは遂げられるのか。三編を収録した短編集。

 内容紹介を読んだときはスワンプマンという思考実験を思い出しましたが、それとは違って、魂だけが戻ってきて思いを遂げようとするファンタジー系のお話でした。

 最初のお話の『懸賞小説』では、死んだ作家志望の青年の魂は出てこず、行動力だけはすごい青年が代わりに遺稿を応募するというストーリーです。循環するようなメタ構造になっています。二番目は、夢を見てるかのような朧げなシーンと回想シーンが交互に繰り返され、主人公が記憶を辿っていく過程を一緒に味わえるようになっています。三つ目は、オーソドックスな主人公目線の語りですが、淡泊な語り口が魂目線に良く合っていました。

 いずれも凝った構成で楽しめました。おもしろかったです。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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