読書感想文 『ニッケル&ダイム ~百貨繚乱~』 椎名 要(著)
百円ショップの雇われ店長が、金髪男子高校生、元大手企業部長、訳アリ美魔女のアルバイト三人と、ドタバタ騒動を繰り広げる。しかし、全員の歯車がかみ合ってきたころ、店長は本部から冷酷な指示を受けてしまう。
40歳代の店長が思いを吐露する一人称視点のヒューマンドラマ中編です。
冒険のできる若さを過ぎて、中年に差し掛かって守りに入ってしまい、それを恥じたり諦めたりして、その結果、老年になったときに人生を後悔する、というのが普通の人の普通の人生なんだと思います。この小説は、そういった普通の人の、弱さや甘さを認めてくれて、諦めることを肯定してくれる、そんな作品でした。
年長者はよく、若いときの苦労は買ってでもしろ、と言いますが、これは苦労したときに得た経験が歳をとってから役に立った、という経験則から言われる言葉だと思います。では、中年になったひとが買ってでもしないといけないことは何でしょうか? 中年の次は老年なので、老年になったときに役に立つことを考えればいいとすると、それはひととの繋がりだったり、生きがいを見つけることだったり、健康づくりだったりするのかもしれません。……なんてことを考えながら読んでました。
何にしても、生きるために必要なのはお金です。100円ショップの商品は、たかが100円ですが、わたしたちが手にするまで製造メーカーから物流、ショップ店員に至るまで多くの人のドラマを経て届くんですね。おもしろかったです。
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