読書感想文 『未来の末端: 燈色の場 SF編』 誌璃空ユウ(著)

 脳科学研究所は、因果律を保つため現実ではピンピンしているアンの過去世界に研究員の理恵を介入させる。その没入《ジャックイン》によって、理恵は既に死んでいるはずの那男の場に転送されてしまう。那男の場ではおぞましい実験が繰り返されていた。理恵たちはそこから抜け出せるのか。

 難しくてこの本の設定を正しく理解できていないかもしれないのですが、「0時間の場」という仮想世界にいる虚像に実像が重ねることでその場に没入できるという設定がおもしろいと思いました。特に時間をx,y,z軸で説明するところは、なるほどと感心しました。現実世界の時間をx軸すると潜在意識の時間はy軸で、y軸に広がる仮想世界はx軸の時間制約を受けないと説明されています。現実世界(x軸)では0時間でも、仮想世界(y軸)では無限の時間を持ち、さらにそれに平行した世界(z軸)が広がっているということですね。この説明は時空間を説明するのにとても分かり易いと思いました。勉強になりました。

 この「0時間の場」を舞台に、登場人物たちが元の世界に戻ろうと苦闘するストーリーです。というのも悪役の那男という男がかなりのサディストで、登場人物(ほとんどがうら若い女性)たちは生きたまま解剖されそうになるんです。読んでいて自分のお腹のあたりがもぞもぞするような感じがしました。

 過去、未来、虚像、実像が入り乱れるため、パズルのピースを埋めながら読んでいくような感覚でした。わたしもなんとか最後まで読み終えましたが、完全に理解できているかはあやしいです(笑)。でもおもしろかったです。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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