読書感想文 『K・D・Pアンリミテッド名鑑 2023年度版』 乙野二郎(著)

 kindle unlimited対応の個人出版本300冊以上を紹介したガイドブック。


 KDP作家の乙野二郎氏が実際に読んだ個人出版本(主に小説)を、ミステリやSFなどでジャンル分けして整理。紹介している本のおおよその趣向は次のようなステータスで表現されており、乙野さんの読んだ感想も書かれています。

王道⇔斬新

辛口⇔甘口

重い⇔軽い

論理⇔感性

速い⇔緩い

 このガイドブックの優れているところは、ジャンル、ステータス、本の感想と見ていけば、自分好みの本を探しやすくなっているところです。ストアの紹介文やサンプルだけでは、なかなか自分の求める本を見つけれらないですが、このガイドブックを使えば自分の嗜好に合う本を探し出すのに大変役に立ちます。わたし自身も、このガイドブックを参考にして次に読む本を探したりしていました。

 商業出版本でも個人出版本でも、星の数ほどある本の中から自分好みの本を探すということは、砂漠の中でオアシスに出会うくらい稀有なことです。それだけに、これが読みたかった、というような本に出会えたときには飛び上がるくらいうれしいものです。このガイドブックはそんな読者の羅針盤になってくれるはずです。

 そんな貴重なこのガイドブックも、大変残念なことに2023年度版でいったん改訂終了とのこと。理由として、出版取りやめにより掲載できなくなる作品が多くなってきたことを挙げられています。わたしも気になったので、自著『わたしの本棚』1から4棚目で紹介している本のリンクを確認してみました。すると、全200冊中、35冊のリンクが切れていました。つまり35冊も出版を取りやめてしまったということです。個人出版ですから作者の都合で出版を取り下げるのは自由ですし、わたし自身も一番最初に出版した短編を出版取りやめたりしています。作者からすれば、この気軽さは個人出版かつ電子書籍のメリットともいえると思います。一方、読者側から見ると、出版を取りやめた本は入手しようがなくなってしまうというデメリットになってしまいます(kindleなら出版取り下げ前に購入済みの本ならデータ上はずっと読めますが、紙の本と違って、その電子書籍を友人などに貸すことも、古本として売ることもできません……)。

 読者の皆さんに声を大にして言いたいのは、少しでも気になる本があったら迷わず買おう、ということです。個人出版本は、たかだか数百円の安い本ですが、作者の気が変わって出版を取りやめてしまったらもう二度と読めません。そうなったらどれだけお金を積んでも読めないのです。そうなる前に、気になる本を見かけたら、自販機でお茶を買うくらいの気軽さで買っておきましょう。もしかしたら、その購入によって作者のモチベーションがアップして、更なる良作を書く力になるかもしれません。作者も読者もうれしくなる、そんな好循環がこのガイドブックから生まれるといいな、と思いました。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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