読書感想文 『蒲生田岬~夕方午後五時の彼氏~』 牛野小雪(著)

 大学生の秀子と奈津美は、展望台でカメラマンと自称する男に声を掛けられた。モデルになってほしいという。秀子は、胸元が開いた恰好をしているその男にいやらしさを感じたが、奈津美はモデルに乗り気だった。その後、奈津美は何者かに殺されてしまう。


 秀子は、大学の同級生を、おしゃれ島、ださくない島、おしゃべり島などと、それぞれの集団を島に見立てているような、少し冷めた目をしている女子大生です。自身はださくない島に所属しながらも若干浮き気味の秀子にも親友がいて、それがおしゃれ島の住人である奈津美なわけです。本作の冒頭では、そのふたりの親友トークが繰り広げられ、関係の深さを印象付けつつ、その後、三角関係っぽいところを匂わせながら紆余曲折があって仲違いして、というのが中盤までのストーリーになっています。ここまで読んできて、わたしはてっきり本作のことを青春小説だと思っていました(笑)。それが急に奈津美が殺されてしまい、面食らったというか、展開に目が離せなくなってしまいました。ストーリーはその後、二転三転しつつ、見えない犯人に追い詰められていくというホラー要素も含んだサスペンスになっていき、一気にラストまで展開していきます。

 振り返ると、『世にも奇妙な物語』的な不気味なおもしろさがありました。

 ラストまで一直線のストーリーですが、個人的には、正人と伝説の先輩との関係をひとひねりして念写をロジカルに説明するみたいなところを追加して長編にしたほうが好みかも、とか思いました。ただ、この中編サイズが読みやすさにつながっているのかもしれませんね。中盤から一気読みでした。おもしろかったです。

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