読書感想文 『凍った嘴』 山岡 和樹(著)

 東西大学の推理小説研究会の六人は、雪が舞う元旦に富士登山をし麓のペンションに宿泊した。そのペンションには、同じ大学の六人が宿泊していた。そのうち豪雪となり、ペンションは外部と連絡が取れなくなってしまう。その中で惨劇が起きる。

 外部と連絡の取れないペンションというクローズドサークルもので、先に犯行状況が示される倒叙形式のミステリなのですが、どちらかというと登場人物が殺人鬼になっていく過程を描いたホラー小説のように思いました。犯人は殺しを隠蔽しようとしたり行方不明に見せかけたりするのですが、それはあまり物語の主題にならず、犯人のこころに闇が広がっていく様を中心に据えています。

 登場人物は全員すがすがしいまでのクズ(笑)なのですが、それもある種の仕掛けでもあるのであまり書けません。

 文章は三人称なのですが、犯人や登場人物のこころの声が頻繁に地の文に差し込まれます。一人称と三人称を行ったり来たりしますので、少し混乱するかもしれません。ただ登場人物のやり切れない思いや恐怖はわかりやすく伝わってきました。

 やはり人間の狂気が一番怖いですね。ドキドキしながら読みました。おもしろかったです。

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