読書感想文 『或ル小劇場の最后 』 折羽ル子(著)

 おれは映画館である。今日はおれの三度目の命日になるだろう。盛大に火葬にしてほしい。それがおれの遺言だ。


 主人公は擬人化した映画館です。前半は、映画の黎明期から戦後の復興までの歴史を映画館という建物目線から語ります。悲愴的になりがちな映画館の興亡が喜劇的に語られていきます。支配人などの語りは、談はおもしろおかしく弁はなめらかで、ついつい読み込んでしまいました。

 中盤からは、エロ少な目グロ多めのエログロナンセンスなスプラッター小説に変貌を遂げます。感想を書くのが難しいジャンルです。さらにセルパブ内輪ネタが満載です。かつてバラエティ番組で一世を風靡した楽屋ネタに通じるおもしろさ。この最初から一般受けは狙っていないあたりが個人出版のおもしろさなんでしょう。

 最期は全て無残に死に絶え、派手に燃え上がって大団円(?)です。読後のわたしの脳裏には、舞台のカーテンコールが見えました。盛大な拍手の中、血まみれの出演者たちがお辞儀をして幕に消える姿が。不思議な本でした。

 前半のペースでお涙頂戴なストーリーも読んでみたい気がしましたが……。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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