読書感想文 『未来透視科学会: シャーロック・ホームズの活躍』 Ah(著)

 ベーカー街221B。シャーロック・ホームズの下宿兼探偵事務所にやってきた依頼人は、未来を透視できるという学会からの手紙を、ホームズとワトスンの前に披露した。信じられないことに、その未来透視学会の予言は、競馬の勝ち馬を3回連続で的中させていた。ホームズとワトスンは、この奇妙な手紙と、未来透視学会の謎を追う。


 シャーロック・ホームズの本格的なパスティーシュ小説です。パスティーシュという言葉を、自分は寡聞にして知らなかったのですが、既存の物語をもとに新しいストーリーを生み出すことだそうです。シャーロック・ホームズには多くのパスティーシュ小説があるようですね。2次創作みたいなものではありますが、原作の品位を落とすようなことは全くなく、新作といってもいいくらい、しっくりくる雰囲気の小説でした。

 本作を読んでいて、シャーロック・ホームズと出会った中学生のときの記憶がよみがえりました。わたしが中学生のときに何度も読んだのは、 阿部 知二さん翻訳の文庫本なのですが、そのとき読んでいて感じたイギリスの雰囲気がぶわっと目の前に現れた感じがしました。さらに付け加えると、その雰囲気というのは、当時NHKで放送していたイギリスグラナダTV製作のシャーロック・ホームズのテレビドラマ(もちろん露口茂さん吹き替え版)の、ベーカー街の曇天なのでした。わたし自身、シャーロック・ホームズを読んで、鑑賞して、ミステリ作家になろうと決意したくらい大好きなシリーズで、その新作を読めた気がして、とてもうれしかったです。

 さて本作は、赤髪連盟を想起させる、どこかコミカルで、それでいて謎めいた未来透視学会が相手です。この学会から依頼者のもとに届いた手紙には、数日後に行われる競馬で勝利する馬名が書かれていて、しかも3連続当たるという、現代でも難しい予想が書かれていました。どうやって勝ち馬を予想できるのか、学会の目的とは一体何か。それは読んでみてのお楽しみです。現代ならメールを使ってもっと大規模にできるかも、と思いましたし、もしかしたら、もうそういう連中がいるかもしれませんね。

 本家と同じく短編ですので、サクッと読めてしまいました。おもしろかったです。

Amazonリンクがエラーになってしまいましたので、表紙画像をダウンロードさせていただきリンクを貼りました。

エンタングルメント・マインド(Entanglement Mind)

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