読書感想文 『駆け出しミステリー作家とサンタ・クロス氏の困った習癖』 和泉 綾透(著)
サンタの格好をして街角に立つ白皙《はくせき》の美青年 黒主晃。ミステリー作家 都並大祐は、彼の過去をあぶり出し、いかに殺すか考える。シリーズ第2弾!
若手ミステリー作家(大学生の都並大祐)が身近に登場する変人をつかまえて、彼(彼女)らとの交流からネタを出していく、という短編シリーズです。作中で殺される候補の人の深い悩みや置かれた状況を掘り起こしていきます。犯人が誰かではなく、殺されるに至る動機や状況を推理していくところにミステリらしいおもしろさあります。しかし「暴き出す」ではないところが読後感を良くしています。
シリーズごとに殺される変人たちが、ミステリ作家 都並の取り巻きになり賑やかになっていきます。殺される特異な人を探しているからこそ、一癖も二癖もある魅力的なキャラクタばかりが集まってくるという良く考えられた構成です。しかも殺されるのは作中作だけなので、このシリーズではピンピンしたまま何度も登場します。うーん、うまい。
主人公の軽妙洒脱な語り口も健在で、軽くてリズムの良いコミカルな語りだけをずっと読んでいても飽きないくらいおもしろいです。
シリーズ第2弾の本作では、サンタの格好で職務質問される黒主という美青年が登場します。彼をどう殺すか? 黒主は下腹部を滅多刺ししてほしいといいます。その理由は? そしていつもの面々(月丘や郁、芽衣子さんなど)が都並をサポートして、物語が収束していきます。作中作は結論付けられますが、本作中の謎解きはボヤっと終わります。ただそれが良い余韻を生んでいます。
たいへんおもしろかったです。おもしろくてシリーズ全部一気に読んでしまいました。明日からしばらくこのシリーズの感想を書いていきます(笑)。
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