読書感想文 『壁伝いの彼女』 飛鳥(著)
ワンルームアパートに住む小野は、見も知らぬ隣人の女に興味を持った。ワンルームの壁は薄く、隣人の息遣いまで聞こえるのだ。ある日、その隣人の女が、部屋に何者かを連れ込んだ音が聞こえた。男のようだった。しばらくすると、隣からベッドがきしむ音と、喘ぐ声が聞こえてきた。
良く知らない隣人に興味を持つのは、ひとり暮らしをしたことのあるひとなら誰しも経験のあることではないでしょうか。わたしも学生時代、上下左右の部屋のひとが気になって仕方のないときがありました(笑)。わたしはどちらかというと相手のことが気になるというよりかは、自分の生活音が聞こえないか気にしたというほうなんですが。たいていの場合、そういう感覚は過剰な自意識なので、独り暮らしに慣れてくると気にならなくなるものです。
さて本作は、そんな顔も素性も知らない隣人に恋をしてしまい、事件に巻き込まれてしまうというサスペンスの短編です。最近の都会でありがちな希薄な隣人関係に潜む怖さを感じさせてくれます。たいへん読みやすく、診察の待ち時間にサッと読めてしまいました。おもしろかったです。
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