読書感想文 『レクス・タリオニス』 渡辺罫(著)
少年時代に起こした犯罪の暴露本を出版した桐島は、通り魔に襲われ、瀕死の重傷を負った。身元が割れることを恐れた桐島は、病院を脱走し、かつての主治医のもとに向かった。一体だれが桐島を襲ったのか、桐島が起こした事件とは何か。サスペンス短編。
あなたは人を殺したことがありますか? わたしは、あります。もちろん現実世界ではなく、夢の中で、ですが……。夢の中とはいっても、自分はそこが夢の世界とはわかっていないので、たいへんなことをしてしまった、という冷や汗の出る嫌な感じを味わいました。ちなみにわたしの場合は、殺人をした場面は記憶になく、誰かわからない人を殺してその遺体を押入れに隠している、という状況から夢が始まったらしく、どうやってこの状況を乗り越えようか、という犯人の心境も疑似体験でき、目が覚めたときは、スゴイ体験をした!と小躍りしたことを覚えています。夢の中では、心臓がバクバクしてそれどころではなかったのですが(笑)。
さて本作です。前半はなぜ刺されたのか、という真っ当な謎でストーリーを引っ張っていきますが、中盤から終盤にかけて、主人公の置かれた状況が徐々におかしくなってきます。これは世界が狂っているのか、精神が狂っているのか、よくわからない状態に読者のわたしも目が離せなくなりました。世界が歪んできているのに、主人公はそのおかしさに気付かず、切羽詰まった精神状態にどんどん追い込まれていきます。まるで夢の中で、そこが夢と気付かず、必死にもがいているような、そんな不思議な世界観でした。おもしろかったです。
Amazonリンクがエラーになってしまいましたので、表紙画像をダウンロードさせていただきリンクを貼りました。
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