読書感想文 『ペデストリアンデッキの舞姫』 慎野 たつき(著)

 真山里奈は夫との折り合いが悪く、単身赴任で都会に出てきて、保険会社で働いていた。彼女には、人には言えない秘密があった。彼女は夫に内緒で、自宅マンションに整体師の男を囲っていたのである。そんな彼女の周りで不審なことが起こり始める。


 感想も紹介も難しいミステリー小説です(笑)。いわゆる**のカテゴリなんですが、それすら言ってしまうとネタバレになりそうなので、伏字にしておきます。映像化不可能、というカテゴリですね(笑)。わたしはそれを知らずに読みましたので、終盤で「おお、なるほど、そうくるか」と驚きました。それまでは、ふたつの時系列がそれを隠すように並行して進んでいたり、こまごまとしたところで疑問が浮かぶところがあったりしますが、それらはほぼ全て伏線で、最終盤で答え合わせしてくれますので、楽しみにしながら読みましょう。個人的には、表紙にも伏線が隠れているのには感心しました。結局、里奈が見ず知らずの男(リョウ)を居候させるところが若干ご都合的に感じられたり、ユキが馬渡に近づく動機がわかりずらかったり、祐実子が死ぬ理由も弱かったり、などなど、違和感は残りましたが、上記のようなカテゴリのミステリー小説ですので、ストーリーとの整合性を取るのは難しいのかもしれませんね。おもしろかったです。

 というわけであまり感想を書けないので、ストーリー以外のところで感じたことを書きますね。本作でも登場する他責思考のキャラクターって、こんなにも共感できないんだったかな、と思いました。昔はそんなことは感じなかった気がするので、ただの個人的な嗜好の変化なのかもしれませんが、自分的には時代の流れもあるような気もしたりしています。自己責任の時代に変わってきている、ということではないかと。これまでの行き過ぎたDEI(多様性、公正性、包括性)に人々が辟易した結果、世界中で揺り戻しが起こっています。これが米国のトランプ現象ですし、EUで伝統保守(AfD,FdI,RNなど)の支持が広がっている理由ですね。わたしもその流れに乗っている側ですので、他責(他決)より自責(自決)をまずは考えていく、という思考パターンになっていきていて、それが他責思考の登場人物への共感ができなくなっている理由かな、と、そんなことを考えながら読んでました。

Amazonリンクがエラーになってしまいましたので、表紙画像をダウンロードさせていただきリンクを貼りました。

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