読書感想文 『ノースアイデンティティ』 ヒロ・AK・イシイ(著)

 世界は未曽有のウイルスパンデミックで崩壊。人々は小さなコミュニティに分かれ、争いながらもなんとか生きていた。そんななか、アメリカ南部に住んでいたリュウジは、母の遺言に従い、アラスカの向こうにあるという『タカトワ』というところを目指し、電動バイクに乗って、ひとり旅に出る。


 本作は、殺人ウイルスのパンデミックで人口が激減し、人々がエネルギーと食糧を巡って殺し合いをしているという弱肉強食の世界を舞台としています。一昔前なら全面核戦争がその役割を担っていた『マッドマックス』的あるいは『北斗の拳』的世紀末世界観ですね。そんななかを、主人公リュウジが、人々に助けられながら、逆に助けたり、手紙を届けたり、仲間を見つけたり、出会いがあったり、別れがあったり、などと旅をしていく、まさにロードノベルでした。ロードノベルって、旅の行く先々で起こるイベントをどれだけ作れるか、というところが勝負ですよね。わたしもロードノベル書いたことがありますが(『カミヅリ!!!』)、全体のストーリーに合わせてイベントネタを考えていくのは結構つらかった記憶があります。作家としての引き出しの量が求められるんですよね。そういう意味で、本作の作者は豊富な引出しを持っているんだろうなと思いました。著者情報をみると旅ライターもやられていたとのことで、そういうバックボーンが本作に活かされたんでしょう。うらやましいです。

 旅が進むにつれ、ダータニアンとは何者なのか、なぜこんな世界になってしまったのか、などの謎が徐々に明らかになっていくところはSF的でもありミステリー的でもあるおもしろさでした。単純な勧善懲悪ではないところもグッドでした。おもしろかったです。

Amazonリンクがエラーになってしまいましたので、表紙画像をダウンロードさせていただきリンクを貼りました。

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