読書感想文 『IQ刑事 part1』 海野李白(著)

 敏腕刑事の橘と若手刑事の松岡は、ある男と焼き肉屋で会っていた。その男の名前は三好大輔。彼は橘の幼馴染で、橘が事件に行き詰まると彼の意見を聞きに来るのだった。彼は、事件の概要を聞いて容疑者の顔写真を見るだけで、その容疑者が犯人かどうか判別ができるという特技を持っていた。


 密室殺人や、詐欺事件などを解決していくミステリ短編集。三好大輔は事件現場に行くわけではなく、話を聞いて容疑者の顔写真を見るだけですので、いわゆる安楽椅子探偵モノのミステリですが、その特技というのがひとひねりしてあって新しさを出しています。初対面の人の第一印象って、みなさんもだいたい外さないですよね。そういう能力です(笑)。推理小説なんかで刑事がよく言う、刑事の勘、というのと同じです(笑)。刑事は、長年の経験から、その容疑者のふるまいや言葉、声音、仕草など総合的に判断して、怪しい怪しくないを導き出しているわけで、それが刑事の勘というもので表されているのだと思います。実際の捜査では、そういう勘によって容疑者を絞り込んでいくと思いますので、現場が重要なんですよね。まさに、事件は現場で起きている、です。そういう意味で安楽椅子探偵モノのミステリは、そんなことわかるわけないだろ、っていう非現実感が出てしまうのですが、この作品では三好大輔の『刑事の勘』的な能力がそれを補っていて、結果的に犯人にたどり着くまでの試行錯誤に繋がり、現実感を出していました。

 語り口は軽妙で、事件も小難しいものではありませんので気楽に楽しめました。おもしろかったです。

Amazonリンクがエラーになってしまいましたので、表紙画像をダウンロードさせていただきリンクを貼りました。

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